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翌朝、ひゐろと孟は、朝食時に居

Le 23/06/2024

翌朝、ひゐろと孟は、朝食時に居間でいっしょになった。

ひゐろはどこか照れ臭く、孟と目を合わさないようにして食事を摂った。

朝食を済ました後、再び自室に戻ろうとするひゐろに孟が声をかけてきた。

それじゃ、時計台で」

「ええ」

孟との間に秘め事があり、なおかつ親が私を送ってくださることを公認している。そんな現実に、ひゐろはくすぐったい気持ちを感じていた。

ひゐろが今朝も口入れ屋へ行くと、事務員から

「今日のお客様は、すでにお越しになっている。よろしくね」

と言われる。

お客様は、小柄で筋肉質の中年男性だった。【改善脫髮】四招避開活髮療程陷阱,正確生髮! -

「初子さんとおっしゃるんだね。僕は、麹町の米屋の店主だ。今日はよろしく」

とぶっきらぼうに言った。

「お米屋さんなのですね。ここ数年、米騒動で商売が大変だったのではないですか」

「あぁ……うちは麹町だったせいか、店先が破壊されるような大きな被害はなかった。ただ米価の影響はあったね」

「襲撃に遭わなかっただけ、不幸中の幸いでした」

「だが、一時は一石五十四に高騰したよ。米があっても手に入らないし、万が一手に入っても庶民が買える値段じゃない。戦争の影響というのは、大きいもんだ」

「うちは父が何とか工面して、輸入米を購入していました」

……そうかい。まぁとりあえず、この車に乗ってくれ」

ひゐろが車に乗り込むと、米屋の店主は続けた。

「四月に政府が米穀法を制定したけれど、まさか国が米を管理するとは思わなかったよ。果たしてどうなることやら」「お米が手に入らなくなった時期から、私はパンを食べるようになりましたけど」

そう言ってひゐろが笑うと、

「パンの影響も、あるんだよな。実は俺もときどき、パンを食っているよ」

……えっ?お米屋さんも?」

ひゐろは笑った。

「そうだよ。俺に限らず、大工や八百屋もそうだよ。手軽に買えるし、片手で食べられる。米屋はそれらの影響を受け、踏んだり蹴ったりだ。そのうっぷんを晴らしに、今日はここにやってきたんだよ」

「楽しい一日になると良いんですが。よろしくお願いします」

ひゐろは、頭を下げた。

「さて、どこに行くかな」

米屋の店主は言った。

「そうですね。最近は上野のほうへ行っていないので、上野公園はいかがですか?」

……上野公園?最近、連日選挙集会が行われているよ。上野と日比谷は、ほぼ毎週のようにね。怒号も飛び交っているし、警官との衝突があるから、君は危ないぜ」

「東京市の米騒動からの影響があるんでしょうか」

「それもあるな。上野公園と日比谷公園は、東京市民が集まりやすいんだろうな」

米屋の店主はしばらく考えた後、こう話した。「日比谷は行けないけど、深川はどうだい?深川には、米の流通拠点がある。まぁ、と倉庫しかないけれどね」

「ぜひ、行ってみたいです!」

米屋の店主は宝町へハンドルを切り、深川に向かった。

「オートガールは、楽しいかい?」

「ええ。毎日、いろんな職業の方がいらっしゃいます。年齢もさまざまで、壮年の方や書生さんもいらっしゃいます。社会勉強になりますし、いろんな場所にも行けます」

「それは良いな」

……ところで、さっきの話に出てきたって何ですか?」

ひゐろの質問に、米屋の店主は笑った。

「そりゃ初子さんは、知らないだろうね。明治半ば以降、東京市にはさまざまな地域からの米が集まるのさ。つまり深川に東海道や北陸、九州からの内地米が水運で輸送されているんだよ」

「蓮が元気に育っていますね」

Le 23/06/2024

「蓮が元気に育っていますね」

「ええ……見ているだけで、元気な力をいただけそうです」

二人は蓮池にある橋を渡りながら、話をはじめた。

「ひゐろさんは、オートガールの仕事はお好きなんですか?」

「もちろんです!さまざまな方と話ができるので、見識が広がります。それに、たくさんの場所に訪れることもできます。これほど良い仕事はないですよ」

「何度も訊くようだけど、知らない男性と二人きりで過ごすのは怖くないの?」

「大丈夫です!心配はいりません」 iamjamay.wordpress.com

先日、仕事で出会った弘というお客様のことは、口が裂けても言えるはずがない。ひゐろは、心配はないと言って貫き通した。

「三重吉さんにはオートガールをしていることを伏せておくし、今日の話は聞かなかったことにします」

……すみません。お手数をかけます」

「ただ、三重吉さんは私が運転することができることを知って、『ときどき、ひゐろのお迎えをお願いしたい』といわれています」

……ええっ!父がそんなことを!必要ないですよ、お迎えなんて。孟さんも勉学でお忙しいのに」

「きっと、ご心配なのでしょう。まぁときどき、お迎えに参ります。勉学の息抜きになるし。オートガールのお迎え役で、僕の隣に座ってもらう」

ひゐろは、クスッと笑った。

……とりあえず今日は、散歩を楽しみましょう!」

孟はひゐろを連れ、芝公園内の芝丸山古墳へ行った。

「孟さんは士族出身だから、我々と暮らし方が違うのではないですか?我が家での下宿生活は退屈でしょう?」

ひゐろは、孟に訊ねた。

「明治の頃に比べ、士族であることの特権はありません。世の中も、そうなりつつありませんか?下宿で勉学を行うには非常に静かな環境で、食事もおいしい。申し分ないです」「……そうですか。そうおっしゃってくださって、うれしく思います」

「士族であるのは、先祖がたまたまそうだったというだけの話です。もちろん先祖は大切に思っていますが、今やそれを話す機会もありませんし。ひゐろさんの一家は、誠実な方々ばかりだと感じています」

「ありがとうございます」

ひゐろは、孟が士族であることで優越感を持ち、話しづらい人間だと思っていたことを恥じた。

芝公園を歩いている間、孟とひゐろは、お互いの家庭環境について話をした。

孟は長州藩のの家系のようで、厳しい教育を受けたようだ。

姉が二人と兄が一人、弟が二人の六人兄弟であることもわかった。

ひゐろも小さい頃親から受けた教育や、家族の出来事などを話した。

三重吉は小学校の教員だということもあり、非常に厳しかったと。

孟とこのような話ができるようになるとは、思いもよらなかった。

孟はひゐろを、銀座の口入れ屋まで送った。

「仕事は遅くても、十七時くらいに終わります。今後もしお迎えに来てくださるなら、服部時計店の時計台の前で待ち合わせをしましょう」

「了解。今日も時計台で待っているよ。いっしょに帰ろう」そう言って、孟は車を走らせた。孟と芝公園に行き、いっしょに帰った夜。

ひゐろは、今日一日のことを振り返り、一人自室でその余韻に浸っていた。

……ひゐろ、良い?」

「どうぞ」

ひゐろの部屋の襖を開けたのは、母の民子だった。

「今日は、孟さんに送ってもらったのね。お父さんが喜んでいたわよ」

……なぜ、お父様が喜ぶの?」

「安心なんじゃない?孟さんもいっしょだから」

……そう」

「昨日は、珠緒さんとお茶をしていたようね。孟さんが話していたわ」

……うん、まぁ」

ひゐろは、生返事でごまかした。

「孟さん、良い人でしょう?将来をされていて、しかも優しい」

「そうね」

……それじゃ、おやすみなさい」

民子はひゐろの反応がないため話を切り上げ、ひゐろの部屋を出た。

今日のひゐろは、ちょっと変ねと思いながら。

「最近、夕方にひゐろを見かけないな

Le 23/06/2024

「最近、夕方にひゐろを見かけないな。あいつは、どこに出かけているんだ」 三重吉は、民子に訊ねた。 「きっとお友だちの珠緒さんと、お花やお茶の帰りにぶらぶらしているんでしょう」 民子は、意にも介さない様子だった。 「あいつはおてんばだから、何をしでかすかわからない。注意しておくように」 「はい」 玄関の前を孟が通りかかり、三重吉と民子の二人の様子を見る。 「……行ってらっしゃいませ。お気をつけて」 孟は帽子を取って、頭を下げた。 ひゐろは父が出かけるのを見届けた後、の着物に着替えた。 「……今日は、珠緒といっしょに銀座へ買い物に行ってきます!」 と玄関先で、行き先を大きな声で言う。 「ひゐろ、行き先を言うなんて、珍しいじゃない」 民子は、に思った。 「……たまには、きちんと言ったほうが良いかなと思って。お父様が心配しないように」 「おかしな子だこと」「とりあえず、行ってまいります!」 銀座の口入れ屋に着くと、事務員の男性が 「今日はご指名だよ、すでにお客さんがお待ちだ」 「……ご指名?私に?」 まだオートガールになって、それほど時間が経っていない。 一体、誰が私をご指名したのだろう。 まさか、あの弘だったらどうしようとひゐろは思った。 「こんにちは。今日は、よろしくお願いします」 目の前に立っていたのは、孟だった。 【生髮方法】生髮洗頭水效用&評價! @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::「……孟さん!なぜここを?ちょっと外に出ましょう!」 ひゐろは二人を見る事務員の目線が気になり、孟の二の腕を引っ張った。 「……それでは、行ってまいります!」 ひゐろは、口入れ屋の事務員に声をかけた。 孟はひゐろに引っ張られて、口入れ屋の外に出る。 「昨日、銀座の伊西屋で文房具を購入した帰り、ひゐろさんと斉藤を見かけたんだよ。悪いけど、後を追わせていただいた。まさか、ここで働いていると思わなくてね。びっくりしたよ。それで昨日着物の特徴を伝えて、ここの予約を入れた」 「斎藤?孟さんは、昨日のお客様を知っていたんですね。確か彼は、東京帝国大学に通っているとおっしゃっていた……」「斎藤には、ひゐろさんのことについては何も聞かなかったけれど」 「当然です!斉藤さんには、何も言わないで。もちろん、お父様にも内緒にしてください。ここで働いていることがわかったら、お父様はきっと許さないと思うから……」 「とりあえず話は、車の中で聞こう」 孟の用意した車は、ひゐろの父の車だった。 「お父様の車!何だか落ち着かないわ……」 孟は声を上げて笑った。 孟は車を、東銀座のほうに走らせた。 「……今日、予約を取ったのは、お父様に話すため?それともお父様の差し金?」 ひゐろは、孟を問い詰めた。 「オートガールの予約は僕が勝手にやったことで、三重吉さんには話すつもりはないよ。ただなぜ、オートガールを始めようと思ったの?」 「本当は女性車掌志望だったけど、採用してもらえなかったの。それで銀座を歩いていたら、オートガール募集のチラシをもらって。それで勤めることにしたの」 「毎日、運転する男性の隣に座る。しかも、お相手する男性が代わるというのは、どうなの?」 「……孟さんは、私にお説教したいんですね」「いやいや。そもそも怖くないの?車に乗っていたら、そのまま客の男にどこかにさらわれてしまう可能性もあるんだよ」 「勤務は昼間です。しかも口入れ屋を通しているから、大丈夫です」 「どこか行きたいところはありますか?」 「いえ、特に」 「……それでは、芝公園のほうに行きましょう」 孟はそう言って、ハンドルを切った。 芝公園の杉並木を、孟が運転する車で抜けていく。 「風が爽やかね」 「車を降りて、蓮池のほうに行きましょう」 孟はそう言ってひゐろを誘い、二人で蓮池に歩いていく。

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