今からそれを土方さんに聞こうかな。
スパンッ
「土方さん!!」
シンッ…
そういや朝から部屋にいなかったな…。
沖田は今度は近藤の部屋に向かう。
コンコン
「近藤さ~ん!沖田です」
「お~。入れ」
ガラッ
「なんだ?総司」
中には一生懸命書類をまとめる近藤がいた。植髮
相変わらず字は汚く、こういうことは苦手らしい。
「土方さんどこか知りませんか?」
「歳…?」
近藤は首を傾げた。
「あ!そういや朝から江戸に向かってもらった!」
「江戸ぉぉぉぉ!?」
沖田は目を見開いた。
「な、なんで土方さんが江戸に?」
「もう一度隊士募集だ」
「隊士募集?それならこの前…」
沖田は言いかけてハッとした。
「今度は名がある道場より小さな道場から取る」
近藤は伊東一派が抜けたことが痛手だったとは言わない。
「なるほど…」
ありがとうございます。と沖田は部屋を出た。
江戸かぁ…。
いいな。土方さん。
お光姉さん。元気かな?
皆。元気かなぁ?
結局沖田は誰に言うこともなくなってしまった。
まっ。いっかなぁ。
沖田はなんだか体が疼くため、久しぶりに道場に行くことにした。
パンッ
「エイッ」
スパーン!
「ヤァァァァァ!」
道場は活気づいている。
「ん?総司!久しぶりじゃねぇか!道場に来るの」
永倉が沖田に気付き、走ってきた。
「はい。お手合わせ願えますか?」
道場は静まり返る。
「あぁ。だがお前。鈍ってんじゃねぇか?正直勝つ自信がある」
永倉がニヤリと笑った。
沖田は黙っている。
「……ん…?」
美海が目を覚ますと背中が妙に温かかった。
あ。沖田さんか。
フワリと香る甘い匂いが美海をそう思わせた。
入ったら刺すって書いたのになぁ。
美海はチラリと自分の隣にある注射器を見た。
「できたんだなぁ…」
美海は思わず笑みを溢した。
私…作れたんだ──。
後はちゃんと効果があることを願うだけ。
早いに越したことはない。今日から投与を始めよう。
「んー―――!」
美海は大きく伸びをすると戸を開けた。
ガラッ
外の光が眩しい。
思わず目を瞑った。
まるで沖田のこれからの未来を差すように太陽は輝いていた。
「なんか道場が大変らしいぜ」
「なにが?」
隊士の話が美海の耳に入った。
「なんでも沖田隊長が…あ!立花さん!おはようございます!」
「おはようございます。沖田さんがどうしたんですか?」
「永倉隊長と試合をしているそうで…」
はぁ!?
あの人何してんの!?
ドスドスドスドス!
美海は眉を寄せ、音を立てながら廊下を歩く。
ザッ
道場の中に一気に入った。
「…………」
美海はげんなりした顔で中を見た。
「ちょ…総司!降参降参!」
ビシィッ
「全く。情けないですねぇ。勝てる自信、あったんじゃなかったんですか?」
中には地面を竹刀でバシバシ叩く沖田と仰向けで倒れている永倉がいた。
永倉はボロボロだ。
沖田さん…。病気じゃなかったっけ?
美海は顔をひきつらせる。
「早く立ってください。久しぶりに竹刀を振ると気持ちがいいなぁ!」
沖田はブンブンと竹刀を振る。
「ちょ、ちょっと休憩!ちょっとだけ!」
「仕方ないですねぇ。じゃあそこのあなた!お願いします」
沖田は近くの隊士を使命した。
「えぇぇぇ!?」
ビシッ
バシィィィッン!
しばらくすると直ぐに隊士はボロボロになった。
おかしいなぁ。沖田さんが暴れてる幻覚が見えるぞ。
あんな元気な患者さん私は知らない。うん。
元気になってほしいあまりに幻覚が見えるようになってしまったんだ。
そういうことにしよう。
きっとまだ疲れてるんだな。
美海は目頭を抑えながら道場を去った。
しばらくは暴れ馬は止まらなかった。