奇妙は今年で数え十三。
戦国の世では既に大人と見なされていた歳ではあるが、机に向かうその横顔には、まだまだあどけなさが残っている。
濃姫は、奇妙が立派な大人に成長してくれることを願う一方で、出来れば子供のままでいて欲しいと願うこともあった。
自分も歳を取ったせいだろうか。
こんなにも純真で、ひたむきで、清い御子が、何故無理に大人になってしまう必要があるのか?
今のままでも十分ではないかと、馬鹿馬鹿しくとも、ついそんなことを考えてしまうのである。
そんな濃姫だからなのか、奇妙が 【生髮方法】生髮洗頭水效用&評價! @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::
「──様?」
と声をかけて来るまで、目の前の子がこちらの存在に気付き、振り返っていたことにも気が付かなかった。
濃姫はあっとなり、「こ、これは…失礼を…」と思わずでに気付かず、申し訳ございませぬ。──義母上様にはおかれましては、ご機嫌麗しう、またお久しう存じ奉ります」
「奇妙殿…」
「こちらへおし下されたということは、もうお元気になられたのですね?」
「え…?」
「にも分からぬご体調の不良が続き、義母上様はお部屋にて日々ご療養に尽くされていると、父上様から伺っていたのですが──違いましたでしょうか?」
奇妙に訊かれ、濃姫は話を合わせるように慌てて頷いた。
「…その通りです。…もう治りました故、心配には及びませぬ」
「それは何よりなことにございます。養母上様、ご本復おめでとう存じまする」
「ええ…有り難う」
濃姫はぎこちなく微笑むと、やおらその足を奇妙の前へと運び
「奇妙殿。 ──…許してたもれ」
彼の前に膝を折り、低く頭を下げた。
奇妙は「はて?」と、目をぱちくりさせる。
「としての務めを果たすこともせず、大変申し訳なく思うておりまする」
「されどそれは、お身体が優れなかった故にございましょう?」
「それはそうなのですが……。実のことを申しますと、他に気にかかることがあり、奇妙殿への気配りが、疎かになっていたのです」
「──」
「全ては、この至らぬの落ち度にございます。…まことにすまぬことを致しました。……どうか、この愚かな養母を許して下され」
切実に謝する濃姫の横へ、古沍は手にしていた高杯を静かに差し置いてゆく。
奇妙は濃姫の黒頭と、松風が盛られた高杯とを交互に見つめながら、やおら穏やかに微笑んだ。
「養母上様、どうぞ頭をお上げになって下さいませ。古の尊いお方の書にも、親が子に頭を下げるものではないとの教えが出て参ります」
濃姫はゆっくりと鎌首をもたげ、微笑む息子の顔を見上げる。
「どのような事情があるにせよ、養母上様が邪心を持ってされたのではないことは、よう分かっています。
養母上様がこうしてわたしの元へ参り、頭を垂れて詫びて下された──。そのお心だけで、奇妙は十分にございます」
「…奇妙殿」
「左様なお寂しげなお顔をなされず、どうかいつもの、お美しく気丈な養母上様であって下さいませ。美しい養母上様が、奇妙は大好きにございます」
気遣いに溢れた言の葉を聞き、濃姫の瞳の縁にうっすらと涙が浮かんだ。
何と良い御子なのだろう。
その包むような暖かさが、であった類によく似ている。
氏より育ちというが、我が子であったら、こんなにも良い子に育っていたかどうか…。
濃姫は今更ながら、亡き類に対して心の底から感謝していた。
「…有り難う…。有り難う、奇妙殿」
目に涙を溜めながら微笑むと
「──…まぁ、源氏物語をお読みだったのですか?」
濃姫は着物の袖口で目元を拭いつつ、机の上に置かれている書物を